「じゃ」
部屋で明日持って行く画材のチェックをしていると、すぐ近くで本を読んでいたリクが唐突に顔を上げ声を発した。
脈絡のないのはいつものことなので構わないとしても、後何か言葉が続くか軽い別れの挨拶様なそれは流石に理解しきれずに眉を寄せる。
「どうした……?」
「……じゃ?」
問いかけると今度は発音を変え、何かおかしいとでも言いたげに首をかしげるが聞きたいのはこっちの方だ。
新しい生き物の鳴き声か何かか?
答えあぐねていると、リクがしょんぼりとした顔で本を開きなおし中身を熟読し始める。
タイトルにはドイツ語と書いてあった。
「なるほど、そういうことか……」
「やっと気づいた! 鈍すぎ、せっか話してみたのに……え?」
ホッとしたような<なんとも不満そうな表情をだが、間違いは一刻も早く直して貰わないと困る。
こんな、初歩的すぎる間違えは。
教科書を奪い取り、その単語をとんと指さす。
「ヤー、だ」
「……え?」
「Jaは、ジャ、ではなくてヤーと読むんだ」
目を見開いて固まること数秒。
ぐんにゃりと教科書に突っ伏した切り動かなくなるリクに、面白いと止めでも刺してみる。
「解ったか?」
「う、うん」
「ドイツ語では?」
「……ヤー」
ドイツ語習得への道のりは、ずいぶんと長そうだ。